後藤さんのこと/INDEXをつくろう!

単行本既読。文庫でも表題作は4色刷り。噛めば噛むほど味が出るけど固すぎて噛めないスルメか、噛めば噛むほど味が出るけど口に入れた瞬間ふわっと溶けるスルメみたいな話が多い。

こんにちは。円城塔ファンです。

既刊の単行本は全て購入、文庫版も揃いつつあります。

とにかくこの作家の文章をまともに理解できる人ってほとんどいなくて、たまに驚異的な理解度で解説をしている人を見かけるけど、まあ僕にはできないですね。

この短編集は、主に時間軸(時間次元)についてと、光の性質あるいは量子論的な可能性をモチーフにしたお話が多いと言えるんじゃないでしょうか。とにかく時間軸は円城塔を読む上で重要なアイテムで、いろいろな作品で出てきます。

時間がぶっ壊れると、たいてい因果律とか物理法則とかいろいろと宇宙の法則が乱れる事になります。そのあたりで文学に付け入る隙が出てくるようで、そのデリカシーのない場所に現れる隙間から文学界に奇怪な攻撃?を繰り返しているのが円城塔です。

 

そんなわけで、トップで紹介している『後藤さんのこと』の+αの短編として収録されているのが『INDEX』というタイトルの短編です。単行本の時は、なんと幅広の帯にこの短編は印刷されていました。何を言ってるか分からないかもしれませんが、そういう事があっても不思議ではない作家です。

この帯、文庫でどうするのかなーと思ってたらこんな風に付いてきました。

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こう書いてあります。

①〈実線〉にそって切り離す。

②頁の順で重ねる。

③〈点線〉の中央をホチキス等で綴じ、二つに折る。

④完成。 

 チクショー。文庫本で工作させられるのは初めてだ。

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原本切り取るのは忍びないので、コピーして、裏表あるのでテープのりで貼り合わせて、カットしました。(このカッティングマット32×10cmの縦長で、どう?いいでしょう。)

なるほど!というのは、ちゃんとまんなかの点線の位置にホチキスの針がくるサイズになってるわけですね。当たり前か。

 

完成したものがこちら。

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あらすじ、というか仕組みとしては、この出来上がった1冊の本には目次が付いているのですが、本が小さいのでほとんど目次しか入ってないっていう話なんですよ。あるいは、目次とはいえこの本の本文でもあるわけで、目次が本文であるとも言える。

そんな感じなので、目次に書かれているのは「指し示すページには目次が書かれている」ということになります。(一応ネタバレなんだけど隠す必要あるかな…)

それでも一応、魔法使いと少年と本が出てくるのでちゃんとお話にはなっているから安心して大丈夫です。

 

最近、早川書房から翻訳本が出ました。

SF的な宇宙で安全に暮らすっていうこと (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

『SF的な宇宙で安全に暮らすっていうこと』チャールズ・ユウ著 訳:円城塔

早川書房さん完全に己の道を邁進してまして、文庫本をすべてトールサイズに変更した(普通の文庫本より少し背が高く、ブックカバーに入らない)ことで受けた批判もなんのその、この「新☆ハヤカワ・SF・シリーズ」は18.4×10.6cmのポケット・ブック判だそうです。細なげぇ。

ただ、今回は透明の樹脂製ブックカバーがはじめからかかっています。わりとしっかりした装丁で、お値段も1,600円(税別)としっかりめ。

海外小説である上に変な形してるから、単行本の文芸コーナーにあるのか、文庫のハヤカワ文庫コーナーにあるのかも分からなかったけど、僕が行った紀伊国屋書店では文庫コーナーに平積みされてました。平積みスペースのあるSFコーナー、大きい本屋じゃないとなさそう。

これは今読んでいる途中なのですが、この円城塔っぷりはやっぱり訳してるからなのか、いやそれにしても内容が円城塔すぎる…!てな印象です。時間軸がおかしくなってめちゃくちゃに切り貼りされているところは、偶然にも『後藤さんのこと』の短編の数々と特に強く結びつきます。

 

またこの本のレビューについては折を見てブクログかこちらのブログでご紹介したいと思います。おわり。