2015年を振り返る:本

年が明けると一気に振り返るモチベーションが低下しましたね。我々が十分な反省をするなんてことは滅多にあることではないのだ。ついに2月になったけど面の皮厚めでしれっとお送りしたいと思います。

読んだ冊数:20冊 買った冊数:27冊 金額:56,588円

いけませんね。積読。しかも読んだ方には図書館とか知人に借りた本も入ってる。

ほとんど単行本ばかり買っているので単価も高い。

単行本は持ち歩きにくくてより進まないんだよな。それでも通勤カバンの大部分を占めつつ電車で読んでるけど、座れたら睡眠優先しちゃうんだよね。

 

本についても、いくつか紹介します!

『半年後、小惑星と地球が衝突し、世界は終わる。しかし、新人刑事は捜査をやめない。』
帯のこれだけでガッチリ掴まれた。中身も期待以上のノワール小説感。こんなセンチメンタルな人類滅亡があるのか。

第2作: カウントダウン・シティ (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

第3作: 世界の終わりの七日間 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

この3部作はとても良かったですね。2015年ではこれをまず第一に推薦したいです。

SFと、ミステリの要素を含むノワール探偵小説。主人公が淡々と、黙々と、そして執念深い性格で、その雰囲気は物語全体の印象になってる。小惑星の落下が迫るにつれて募っていくのは途方も無いせつなさ。何もかもがせつない。第3作のラストシーンは万感の思いが押し寄せます。

 

米文学が好みになってきたところにこの本は最高だった。いわゆる古典的なマジックリアリズムとはビートが違う。アップテンポで自由な語り口が確かにポップ。それでいて物語にドスが効いているので攻撃力もある。オスカーのナンセンスなキャラクターでこの物語をキメるってところが超かっこいい。

主人公がナード(≒オタク)というのがめちゃくちゃ効いてて、物語の土台がナンセンスでダサいっつーのが良い。それだけなら日本では小さい世界の話に終始しそうなところ、ドミニカ共和国という環境と歴史がそれを許さない。照り付ける太陽と深い闇がオスカーを祝福し、切り裂いていく。

あまりすいすい読める小説でもないしボリュームもあるので万人にお勧めはできないけど、この小説だからこその魅力があるいい本でした。

 

帯の『サノバビッチとジャンキーまみれのファックライフ!』がマジだった。気取らず連発されるマザファカ&ファック。カジュアルな地獄。

しかしこの世界ってこんなにタフな現実だったっけ…アフリカの描写がガンガン頭に響く。

 オスカー・ワオと同じく、非常にタフな環境が舞台になる話。一方で頭のネジがぶっ飛んでいるインテリという組み合わせがとてもクール。

翻訳の舞城王太郎は独特なマシンガン文章が特徴の作家。原書読んでないしそもそも英語わからないけど、この本に関してはほんとにストーリーと設定からほとばしる生命力みたいなものが翻訳されてもありありと感じられるところがすごい。著者と訳者がシンクロしている感覚。

まず日本に住む一般人が経験したことのない環境を、ここまで肌感覚を伴って再生できるってすごい。「体験」としての読書ができます。

 

本当に素朴でまっとうなバランス感覚のある著者の文章を読んで心底ほっとした。自然に対して人ひとりが背負える業、背負うべき業のサイズ感を実体験として持たれていて、その生活を無理なく実践されている事を尊敬します。

最近はSNS中心に評論家気取りの一般人(まさにおれだけど)が増えてる中で、クオリティが高い言説もある一方、やはり全体の物量が大きくなるにつれその裾野もひろがっていくわけです。

そうなってくると、学校の作文で書くような「どうぶつをころすのはざんこくでよくないとおいます!」レベルのまさに小並感コメントがあふれかえり、これに対して「所詮この世は弱肉強食、グリーンピース死ね」というような中二コメントが応戦するという控えめに言って地獄の様相を呈する今日この頃。

本当に価値のある言説っちゅーのがこの本にはあると思います。あくまで、人ひとりが扱える概念とか、感覚っていうのは限りがあると思うんですよね。いくとこまでいくと結局現場で何が起こっているのかというところに立ち返ってくる。

絶望も楽観もしない、現実を直視するという点が非常に気に入りました。自然原理主義でもなければ、人間至上主義でもなく、人ひとり、自分の手のひらを見つめるような文章に感銘を受けます。

 

4冊紹介しましたが、気軽におすすめできそうなのはけもの道とギリ地上最後の刑事かなあ、オスカーワオとコールドスナップはめちゃくちゃ灰汁が強いです。でもその灰汁の強さにシビれたんだよな~

以上!