ここんとこ見た映画

グランド・ブダペスト・ホテル

この中で一番、ああよくできてるなあ、って映画。大好き。

登場人物を正面からどんと大写しするシーンが多いんだけど、それもそのはず、際立つキャラクター。アガサのメキシコ型のアザとか、く~!

どこから話していいかわからないな。出てくるアイテムもキャラクターも筋書きも音楽も、どれもこれも素敵で超好みなんだよな。

劇中の年代による画面のアスペクト比の違いもそうだけど、結構技術とか効果としてはいろいろ仕掛けがあるのに、ほとんど溶け込んでるというか、全然違和感とかやらしさがないんだよね。ドヤ感なし。あまりに自然だからたぶんおれ色々気付いてないんじゃないだろうか。

コミカル、シリアス、ドタバタ、アーティスティック、ハートフル、インテリジェンス・・・ゲスな場面もなくはなくて、ほんとすごいわ。

ちなみにムスタファ役のF・マーレイは下の『インサイド・ルーウィン・デイヴィス』にも出演してます。それからメイドのクロチルド役のレア・セドゥは同じく下記の『アデル・ブルーは熱い色』で主演。ジュード・ロウとかもいるし、凄い映画ですよ。

そわそわしちゃってあんまりうまく書けないからこんなもんで終わるけど、とても可愛くて映画の面白さが詰まった作品です!

 

インサイド・ルーウィン・デイヴィス

すごい放りっぱなしで終わるけど、それにしても哀愁と歌唱力が際立つ傑作。

なにより「人生のままならなさ」が渋い。

中絶とか、2歳の子供とか、猫のことなんかもやるせないしあっけない。

特にこれは!と思ったのは、雪で足がびちゃびちゃなとこ。寒いし痒い。あの惨めさ。映画でそこ?ってとこだけど、それがいい。

そして、ついに決断したと思ってもそれすら上手くいかない。自業自得。因果応報。

だからといって暗くはない、明るさもある・・・と言いたいところだけど、その明るい部分もやっぱり質がイマイチなんだよね。低品質な救いがある。

さて、この映画を観るきっかけはそう、キャリー・マリガン出演です。

あの、60年代アメリカフォークシンガー独特の”薄幸人生の中のほんの少しの幸せ”感を見事に纏っていましたね。あと今まで見た中でダントツで言葉が汚い。

この映画、とても華のある映画じゃないし、衝撃的でもないんだけど、カンヌ国際映画祭でグランプリらしいんですよね。この盛り上がらなさ。一応カンヌだから?TOHOシネマズでもやってるけど、公開1週間というのに客全然いなかったなー。

部分的に否定しているようなレビューになってしまったかな?そういう、カサカサしたような部分もひっくるめて良い映画だったなと思ってます。猫かわいい。

 

百瀬、こっちを向いて。

あれですよね、無理してありえない恋を成就させたり、過剰に夢を膨らませたりしないところが良いですよね。タイトルからすると、こっちを向いた後を考えちゃうけど、本当にこっちを向いて。どまりだからなあ。

こちらはファンというほどじゃないんだけど、Tumblr早見あかりファンがいてよく画像が流れてくることと、2年くらい前に深夜テレ東で「ウレロ☆未確認少女」というシットコムやってたの見てて、なんか馴染みがある。

冒頭に書いたとおり、ほんとほどほどにまとまってて好きです。向井理を必要以上に使うわけでもなく、先輩もまあなくはないレベルの悪意だし、みんな別々の方向で未熟でただ切ない。一方で早見あかりの女優?としての立ち位置もあってかそこまで美少女萌えみたいな圧もかかってなくて、ほんのりJKサービスカットがあるくらい。

レイトショーで淡い感傷を楽しむのに丁度いい作品でした。

 

アデル・ブルーは熱い色

内容はレズ。7分だか8分間の激しく致すシーンが話題を呼んだ作品です。実際にディルド的なものを使ってやってるらしいんだけど、こういうのって賞を取ったからいいものの、鳴かず飛ばずだったら騙されてAVに出演しちゃったみたいにならないのかなあ。

男の立場からすると、これは全然観られるね。ちょくちょくホモ映画が映画賞を撮ったりしてて、作品的には見たいけどしかしホモはなあ、という気もして観てないんですよ。とりあえずこっちならいけるかなと思って。

実際、コトが終わってしまえばどうということはないって感じで、例のシーンよりも色を使った感情の移り変わりとか、日常と愛のバランス感とかの方が見どころ。ボーイフレンドとの微妙な空気、レズビアンバーでの浮ついたどっちつかずの心情、保育園での仕事のシーン、すれ違う視線、空回り、と各場面の細かな仕草に魂がある。

主演のアデル(役名と同じ名前)は本当に良いです。顔立ちがちょっと親しみがあるというか、親しみついでにだらしなさみたいなところが見え隠れしてそこがまた役にはまってる。口もとかな、口もとに注目。

監督が男性なんだけど、主演の2人は執拗なセックスシーンのリテイクにうんざりしてたらしくて、特にレア・セドゥは監督を罵倒したとかでニュースになってて笑った。そんなことがあったとは思わせないし、1発OKだったんじゃないかというような出来だったからすごいプロ意識だよね。アデルは自然な良さが滲み出てる感じだけど、レア・セドゥは本当に演技が上手いと思わせる存在感だった。

あとどうでもいいんだけど、映画館で、僕から2席ぐらいあけて右にいた男性が肘掛を握りしめて身を乗り出して食い入るように画面を見つめていて、いやあすごいなあと思いました。

 

白ゆき姫殺人事件

ふつう。あえて勧めはしないかな。

真犯人の殺人の動機が大したことなくて、それもSNSと合わせて世相を表したということではあるのかもしれないけど、リアルでもフィクションでもしっくりこないのは同じですよね。ちょいと巷の人々に対する説法めいたところもある。

ひとつ引っかかったのは、最初赤星が知り合いの女と電話しながらTwitterにこの女まじうぜえみたいな事書いてたのに、中盤以降あたりでその女にもフォローされてるっぽい感じだったんだよね。おかしいよね。本垢とサブ垢みたいに分かれてたかとか見落としてるのかもしれないけど。

親友とのラストのシーンはなかなか心温まるなあと思うのですが、ただちょっとデフォルメされてはいるかな。貫地谷しほり演じるヒキニートがわりと様にはなってたけど、本物のヒキニートはもっとダメな感じだよね。なんか芯の強さがある頼もしいヒキニートだった。

 

ポルトガル、ここに誕生す ギマランイス歴史地区

たぶん人気無くて劇場すぐ終わるだろうなと思ったら本当にすぐ終わって観られなかったやつ。レンタル借りて観た。

ギマランイス歴史地区というのは、ポルトガル北部にある同国発祥の地とされる地域のことで、2012年に欧州文化首都に選ばれた記念事業としてこの映画がつくられた。EUが主導する欧州文化首都という事業は、毎年加盟国のひとつの都市を選出して、1年間その都市についての関連事業を行う、いわゆる町おこし的事業だそうです。

4人の監督による短編映画をまとめたオムニバス形式。4人の中で知っていたのは、『ル・アーヴルの靴磨き』のアキ・カウリスマキ監督と、『ミツバチのささやき』のビクトル・エリセ監督。

カウリスマキ監督の『バーテンダー』は柔らかいユーモアで、そこまで重い悲哀とか郷愁みたいなものはなかった。こっちの方の映画って、ボケが非常にゆっくりとしていてここだっていう笑いどころの瞬間がないから、日本における一般受けは難しいだろうなとは思います。その点ハリウッドは爆笑を求めるという点で日本のお笑いと通じるところがあるよな。

ビクトル・エリセ監督『割れたガラス』はドキュメンタリー形式。ドキュメンタリーは見慣れてないからよくわからないな。それぞれ人によって想いが浅い人もいれば、懐古的に語る人もいるし、思ったよりも過去を美化しない流れだったところが記憶に残ってるかな。

他、『スウィート・エクソシスト』はこういう悪夢みたいなパターンのやつちょっと苦手かな。美術館で映像作品としてエンドレスで放送してそう。『征服者、制服さる』は口直しというかこれまでの3つの短編を締めくくるのにうってつけの軽さでわりと好き。ひとときの旅を終えて地に足が付くという感じで、ほっとして終わりました。

しかしなんだろう、記念映画なのに内容がほとんど自虐的だったな。ある意味ニュートラルな感覚が一貫していて誠実には感じるけど。土地柄、常に憂いが漂っているところがあって、そこが公式サイトにも書かれている「サウダーデ」の精神なのかな。

 

アナと雪の女王

良いですね、ミュージカル映画面白い。

雪山の雑貨屋の店員とカメラワークが、ゼルダの伝説の店っぽい雰囲気だと思ったんだけどどうかな。間違えた選択肢を選ぶと急に態度が変わって外に放り出される感じとかね。

あとは、SNSなどで話題になっているアナが鬱病の患者(姉の女王)を殺しにかかっているという疑惑について、そもそも子供向けのディズニー映画見てなにをつまらない事を言っているのだという話ですが、それを置いておいて、そちらの向きの方と同じ土俵で話をしてもアナの行動はちゃんと大義名分があると言えるのですよ。

なぜなら、彼女は雪山に引きこもっただけでなく城下町を冬の世界に閉ざしてしまったという部分があるからなのです。映画見てない人はそこ知らないかもしれないからね。

そういう意味で、わりと姉ちゃん他の勢力には殺されそうになってて急を要してたということもあり、多少強引でも心を開いてなんとかしてちょという願いはまあ正当でしょう。

個人的な好みで言えば、こんな優しい人にアナはなんて酷なことを言うんだ・・・という感想もあるんですが、売れに売れているLet It Goという曲は姉ちゃんが一人で生きる!と決めた場面の曲なので、ディズニーとしても必ずしも「一人で」という部分に価値を認めていないわけじゃないと思うんですよね。

というわけで、あえてディズニー映画にいちゃもんつけるあたり根暗はいつもこうだから根暗なのだ。という特段珍しくもない見解に行き着くのです。同類の人間として気持ちはわかるけど、こんな目立つところで水を差して自らレッテル貼るこたあないですよ。

 

よっしゃ、こんなとこですね。粒ぞろい、いやアナは大ヒット作か。

なんにしても楽しませて貰いました。GBHの出演者を辿ると(公式サイトのキャスト紹介が使える)いろいろと面白そうな映画に出会えそうなので、そちらの旧作なんかも攻めていきたいですね。