新潟土器の旅つづき

王冠型土器

前回の火焔土器の世界でちらっと「王冠型土器」なる言葉を挟んでいるのですが、それがこれです。

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火焔型土器と対になっていると考えられている土器で、セットで出てくることもあるらしい。陰と陽のような、なにか対立した概念を表しているのではとか考えられてるようだけど、どちらも一見してテーマがわかるような形ではないですね。

で、これ見ててなんかに似てるなーと思ったらあれでした、ゼルダの伝説トワイライトプリンセスミドナの石仮面。思いついた時はすごい!まさしくこれだ!と思ったのですが、調べてみるとだいぶ形違いますね。まあ似ていなくもないかなって程度で。でもイメージはかなり近いと思うけどなー。だめかなー。

 

遮光器土偶

今回はほぼ火焔土器様式の縄文土器に注目して博物館を回ったけど、もうひとつ気になるものとして遮光器土偶があるんですよね。これです。

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前回紹介したクリスタルサイレンスにも遮光器土偶が出てきます。主人公のネット上のアバターがこの姿。火焔土器よりも新しく、縄文の晩期に東北地方を中心に作られたようです。

女性的な外見から安産または豊作祈願の土器ではないかとの説があります。一部では「無脳症児」という脳が欠損した状態で生まれてくる未熟児を模しているのではとの説もあるのだけど、これも結局は死亡した嬰児を弔い安産を願う意味合いになるし、例えば飢饉で子供を間引いた事に対する供養であれば豊作の願いへとも繋がる。

縄文晩期というのは、大体紀元前1000年前頃~紀元前300年前頃なんだけど、気候が少し寒冷化したみたいなんですよね。これは特に東北地方では飢饉が起こる要因になりうるし、青森の遺跡では抜歯の風習が盛んになる時期で、これも神を鎮めるための犠牲・贄の意味合いがあるとも考えられそう。

 

縄文文化の捉え方

ところで度々引き合いに出すクリスタルサイレンスだけど、この通り縄文中期の新潟だけの火焔土器に、晩期の東北のみの遮光器土偶、そして縄目の付いた縄文土器に沖縄のイメージなんかも重ねてて、わりと大雑把に縄文文化を引用しているんです。そういう点では具体的に縄文文化がキーになるわけじゃなくて、表現のきっかけというかある種のモチーフでしかないから、もし読まれる方がいればそこはあまり期待しないでください。僕自身はあくまで表現として美しいな、と感じたまでです。

1万年続いた縄文時代は、とても安定して平和な暮らしであった。自然と共生していた文化だ。と見る人と、上記のように非常に貧しく神に祈ることしかできず、低い幼児生存率により人口増加のブレイクスルーができない苦しい時代であった。と見る人もいます。

個人的にはあまり極端な立場に立つつもりはないけど、縄文時代はすぐに人(特に子供)が死ぬし諍いにおいては暴力に頼る部分はあっただろうと思っています。ただし、人口が少ないというのはある意味救いで、気候さえ良ければ食料は自然からの採取で賄えるし、戦いの機会も少なく組織的な暴力(=戦争)も難しいでしょう。そういう意味で縄文的な「自然との共生」っていうのは、人間自身も現代からすれば大きな犠牲を払ってやっと実現できることだと思います。今の人口では無理です。そのまま自然へ帰ることを選ぶのならば、隣人を見殺しにし我が子を危険にさらす世の中にするということだと思ってます。そうであるなら、テクノロジーで自然を改変し膨大な人口を支えられるだけのチート行為を行うのはやむを得ないですよね。

 

その他の気になった展示

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縄文時代のクッキーです。形がめっちゃクッキー。クッキーと言ったけど、もしかしたらかまぼこかもしれないしハンバーグかもしれない。炭化した食品としか書いてないからね。

資料には、炭水化物をベースとしてタンパク質や脂質が検出される練り物状の食品が出土すると書かれてました。保存にも携行するにもいいしそりゃ昔の人も思いつくよな。

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港川人の人骨。こちらは沖縄で出土。

沖縄旅行の際、ガンガラーの谷というところに行ったんですが、まさにそこでこの港川人の説明を受けました。これか!と。なぜ新潟にあるんだ。旧石器時代なので縄文よりうんと古いですね。

 

いやーなかなかアカデミックなエントリになりましたね。でも気をつけてください。かなり個人的な推論が入ってるし、ソースも明確に示してません。もともと不確かなことが多い大昔の話なので、話半分ということで・・・