好吃電影

東京ごはん映画祭という幸せそうなイベントが開催中らしい。ところが!開催地は表参道、目黒、南青山、中目黒・・・クソッ、さてはブルジョアロハスなイベントか!

それでも、映画館は渋谷のイメージフォーラム。ああ、あの立地のイマイチな・・・ゴホン、、、いいや、ありがとう渋谷。文化の中心は今でも渋谷にあるよ。他のブルジョアな街は所詮箱庭、完成品が運ばれてくるだけで、何かが生まれる土地ではないんだ・・・

という完全なるプロレタリアート的偏見に満ちた卑屈な書き出しから始まりましたが、悲しいかな事実そういう気持ちがないと言ったら嘘ですね・・・

そんなごはん映画に惹かれ、向かった先は渋谷!ではなくTSUTAYA!!近所の!!!

食欲にのまれ、金銭にこだわり、怠惰に溺れるなんて卑しい子なんでしょう。

 

天使の分け前

ん~良かった、久々に打ちのめされない映画だなあ!と思ってレビューを見たらなかなか辛辣なご意見も多いようです。あれ?

そういうモラルや正義に関する内容としては、蒸留所のオーナーの「勇気がない」というセリフにとても納得。“模範的”映画であれば、金に目が眩むのを止めるのは正義感かもしれないけれど、このシーンでは度胸の問題でしかなかった。

善悪どちらに転ぶかというよりは、心がどうあるか、人が前に進む姿とは、という事だったんじゃないかなと思う。それが罪かどうかというのはその後に仕分けされる事で、社会を治めるためのシステムは、ある意味で人の心に備わっていない部分を補うものでもある。

懲役刑を免れ社会奉仕活動を命じられた主人公が、子供が生まれた責任感の芽生えをきっかけに、ひょんな事で参加したウィスキー蒸留所の訪問から人生の逆転を(ちょっと危なっかしく)つかみとる物語。社会背景は重いものがある一方で、話としてはわりとあっさりしていて、後半の清々しい部分とちょっぴりドキドキする感じが楽しい良い映画でした。

天使の分け前、イイネ。

 

花様年華

ウォン・カーウァイ監督、トニー・レオン主演。

大人。ダンディ。艶っぽい隣の奥さん。

社長秘書。妻は不倫。

雨。屋台。タクシー。

夜。プラトニック。

すごい・・・

 

 

すごいのに、チラっと写ったワンタンがサブリミナってその夜ワンタンスープを食べたなんて感想書けない・・・

 

バベットの晩餐会

こういうの見ると、何もないど田舎における信仰の必然性みたいなもの感じるよなあ。生活に必要なものに見えてくる。全く影がないわけじゃないけど、傷つかずに見ることができる温かい映画。

やっぱり晩餐会が一番のシーンだと思うけど、そこでの村人の誤解が唸る演出。得体の知れないバベットの料理に怯えて誓う「料理への無関心」。しかし心配とは裏腹に出てくるのは素晴らしい料理の数々。そこで村人たちはその誓いを破るでもなく、だんだんと料理に惹かれ、はじめは密やかに味わいを楽しみ、言葉ではなく表情と感情がほぐれていくその様で料理の美味しさを表現する。ここが凄い。信仰に基づく抑制が効いていることで贅沢な料理を楽しむ嫌らしさが消え、バベットの真心が引き立ついい筋書き。

ちょっといいなと思うのは、北欧のあの乾燥した風土。乾いた魚、パンの長期保存、キッチンに常備できるハーブ。あのヨーロッパの羨ましいキッチンは乾燥した気候があってできる事だよね。反面、新鮮な食材に乏しく水は貴重で料理のレパートリーも少ないという大きなマイナスポイントがあるんだけれども。

 

恋人たちの食卓

 ・・・お父さん!

料理の鉄人である父と、その娘の三姉妹の物語。冒頭の調理シーンのうまそうさは猛烈なものがあります。しかし、意外と本当に味わって食べるシーンは少ない。なぜなら彼女らは心ここにあらずと言った体だから。

という流れで恋人たちの物語が始まります。あーあーあー・・・というイベントの多い一家だけど、海外映画に共通して感じるサバサバ感がありさっぱりとしている。わりと面倒くさい状況に追い込まれている気がするんだけど、展開に緩急があってそこまでくどくない。

すげえと思ったのは子役の珊珊(シャンシャン)。いい演技だこりゃ。表情がいいね、屈託のない自信にあふれてるというか。おじさんが弁当持ってくるところ、さっきまで食べてた弁当を自然に避けて、おじさんが机にひとつひとつ器を並べるのを待つ珊珊の顔。地味!だけどリアル!

バスのシーンでお金を見せつつバスが来たから・・・の流れ!OLか!友達にメニューの希望を取るシーンの「あんたは!」とかも熟練の演技ですね。

台湾、日本の物がチラチラ見えますね。トトロのポスターとか、「ハナコ」って何かの店?とか。旅行で行ったけど、飯の作りが日本人と通じるところがあって馴染みやすい国です。そんないろんな国行ったことないけど。丼ものとか、甘辛い味とか。

薬膳の基本は「能・性・味」のバランスらしいです。そして「色・香・味(スー・シャン・ウェイ)」の完璧な料理たち。最後に感じる味とは、人生の・・・

いい映画でした。

 

* * *

ここまでは、ごはん映画祭で上映されている作品。次のふたつはマイチョイスごはん映画です。本当はたまたま最近見ただけです。

 

青いパパイヤの香り

タイトルからかなり危険な匂いがするのですが、意外と凄いことは起こらない。

でも、やっぱり危険だよなあ。10代の子供を未熟なパパイヤ<女性>として描き、しかもそのパパイヤと寄り添う映像というのは・・・これをエロスと言ってしまうのは憚られるよなあ。いやでもパパイヤの汁とか種とかヤバイよな、でも何も変なことはさせてない。その辺の絶妙なバランス感を持った作品を監督デビュー作としてぶち込んでくるあたり、そりゃ話題にもなるわ。

惜しむらくは、これを今のカメラで撮ったら一層ヤバイ事になると言うところかな。原作が原作だけに色々と言われるけど、『ノルウェイの森』はすごく良かったと思ってます。あれはとにかく絵が綺麗だった。どちらかと言うと内容が抑え気味で風とか雪とかドライな印象がある映画だけど、青いパパイヤの香りは湿度の高い画だから、今度またこういう汗ばむ映画を撮って欲しいな。

女中のいろはを教わるシーンの炒めもの美味そうだった。アジアはほんと飯が美味そうでいい。

 

クスクス粒の秘密

衝撃の最後。なによりも悪いのは日本語版パッケージのタイトルロゴ。何しあわせのレシピ風ハートフルコメディ映画を気取っているんだその間接照明的エフェクトはなんだ!!!!

こっちが一生懸命愛そうとしているのにこいつらときたら・・・やたら焦燥感が募り心臓が締め付けられそれでもきっとこの辛い曲面を乗り越えて最後まで見届けるぞと誓ったのになんで・・・・・・・・・・・

見終わった後に残る空虚な喪失感とぷにっとしたお腹の映像。

まあクスクスは食べたくなったけどそんなに手軽には食えないしな。あと劇中の港でとれた魚の死んだ魚感は名演ですね。見事に死んだ魚だった。(貶してるわけじゃないマジで)

 

 * * *

こんなところで、ひとまずごはん映画は締めたいと思います。ん?下の映画?は劇場で見た映画ですよ。鰻?何?

 

レッドファミリー

韓国にいる北朝鮮工作員の話。コメディかと思ったらヒューマンドラマだったパターン入ります。南北問題と家族の問題を絡めたストーリーが良く出来ているし、何より設定が面白い。設定の面白さでコメディ色を付けようと作り始めたら言いたいことが沢山あって、こんな風になりましたという印象かな。そのコメディ色の名残が隣の韓国人一家のオーバーなクズさ加減に残っています。

して、家族というテーマなんですが、これは一度家族を失ったり、あまりいい状態じゃない人だったり、あるいは家族と離れて暮らす人のほうがよりリアルに刺さってくる映画なんだと思う。じゃあ僕は特に大きな問題のない家族と暮らしていてどうなのかというと、それこそその家族の大切さを実感していないんだと思うんですよね。

この両者の隔たりというのはすごく大きくて、これが解決しない南北問題に繋がってくる。映画の中では若い世代に解決を託していたけれど、それはそれで人任せだなあというのが一応まだ若者に分類される(と信じている)僕の感想でもあります。ある意味でこの感想こそが家族というものを理解していない証拠かも。当事者意識の欠如。

なかなか説教臭い映画かな?という説明をしちゃっているかもしれないですが、それはそうでもないです。工作員の“レッドファミリー”は結局その家族を二重の意味で失うし、隣人一家もついに家族愛を実感するには至りません。キャンプの笑顔と船上での涙がただ悲しく、いくらベタでもラストの救いがあって本当に良かったなと思わざるを得ません。

しかし冒頭の鰻よかったなあ。当然日本のうな重の方が100万倍うまいだろうと思ってるんだけど、見方によってはゲテモノのうなぎをああやって豪快に焼いてたくさん食べるのやってみたさある。

 

そこのみにて光り輝く

最後の 昭和としての北海道。という舞台設定をたまに見ますね。’10年代に残るレガシー。

あうあーお姉ちゃんメンヘラ・・・?と思ったらそんな事無かった。よかった。最近はあれですよね、綾野剛みたいに魂抜かれた系俳優人気ですよね。佐藤健斎藤工西島秀俊・・・そういう不健全さ嫌いじゃない。

お姉ちゃんの部屋、案外かわいい物があって良かったです。その辺女性監督っぽさあるかも。結構そういうタイプの人でもかわいい物好きなのリアルだし良いですよね。一方でお姉ちゃんがお父さんの・・・という痛々しいシーン、男としてはあそこまでは動揺しないかなという気もしなくもない。ただ哀しみが積もるだけで。

途中からお母さんがおかしいというふうになるけど、なんか自然におかしくなったよなあ。最後の方ひどかったな。

全体としては、人の営みのどうしようもなさとその裏側の美しさみたいなところがきらめいている映画かな。うまく例を出すのが難しいんだけど・・・達夫が酔って千夏のいる店を冷やかす場面、あの笑いが痛ましくて。傷付いた自分を隠すねじれた優しさがうう。浅い日差しがチラチラと反射する水面とか、瞬くネオン、草木の隙間から漏れる光みたいな、そんなイメージ。全体にかかる影とか闇にうかぶ仄かな光。筋書きとタイトルから受ける印象よりずっと優しい物語だった。

 

* * *

なんか凄いな文字だけでこんなに書いてしまった。サムネイルでもあるともうちょっと読む気になりそうな記事になるのかな。でもクリエイティビティがないというか適当に画像引っ張ってきていいものかというところで面倒になりますね。

もうお腹いっぱいで書けないので残りの最近見た映画はこんな感じ。 

キック・アス2、AKIRA千年女優るろうに剣心 伝説の最期編

あとはなにかあったかな?わからないな。です!飽了!