京都に半日

1.いい宿

最近よく見かける外国人をターゲットにしたホステルやゲストハウスに近い宿に泊まってみた。部屋は共有ではないので、普通のビジネスホテルとの中間くらいの宿。

中に入るとエントランスがそのままラウンジになっており、中央のキッチンを囲むようにソファやテーブルが配置されている。

予約したプランは輸入ビール1本とおつまみ付き。サリトスというテキーラフレーバーのビールを選ぶ。夕飯は食べてきたので、ラタトゥイユとポテトチップスを少し取った。

キッチンの反対側のカウンターに席を取り、ビールをグラスに注いで本を読む。

フロアには他に若いカップル、40代くらいのサラリーマン、アジア系の観光客、20代前半の女性2人組、着物を着た坊主頭の中年男など様々。端的に言ってごちゃっとした客層である。値段の安さを求めてきた人と洗練された施設を求めてきた人が同居する空間。ある意味味わい深い。

背後のスクリーンには京都市内にある系列ホテルのラウンジが映し出されており、ピアニストがジャズの生演奏をしていた。

 

部屋は木目調の化粧板を使った家具やモルタルの二段ベッドなど、二流っちゃ二流の洒落た宿なのだが、なかなかどうして使いやすい。

気になる点は、部屋が酸っぱい臭いがすること。前の人の汗臭さと言われればそんな気もするし、化粧板や木製家具の接着剤臭と言われたらそうかもしれないと思う臭い。

トイレと風呂は共同だけど、共同って言葉の響きとは違って、普通の商業施設のきれいなトイレと洗練されたデザインのシャワールーム。ビジネスホテルのカビ臭いバスルームより圧倒的に良い。大浴場(小)もある。

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なお、一見ベッドが狭く見えるが、実際に狭い。身長174cmの人間は大の字になって寝た。

 

2.読む本

ラウンジで読み始めたのは『安徳天皇漂海記』だ。イロモノ小説かと思いきや、わりと濃密な中世文学の知識を要求してくるイロモノ小説である。和歌や文献の説明は最小限で、古事記平家物語吾妻鏡伊勢物語方丈記などの古典の数々と、和歌・琵琶語りが鮮やかに織り込まれた物語。中盤まで読み進めたが、感情の状態としては「寂寞」というところである。

安徳天皇漂海記 (中公文庫)

安徳天皇漂海記 (中公文庫)

 

 

3.映画

この日はホテルにチェックインしてラウンジで1杯飲んだら映画を見に行く予定だ。

旅先で映画を見ることの良さを体験したのは、名古屋の伏見ミリオン座で見た大島優子主演の『ロマンス』である。

ロマンス

ロマンス

 

特別ヒットしてないし、大島優子も100点ではない演技だったし、途中再現VTRみたいだったけど大倉孝二が妙にいい味を出しすぎていてなぜか憎めない謎ポジションの映画。

しかし映画の舞台の箱根と、この映画を見た名古屋が共に自分の中で「枯れた旅先」というくくりになっていたために先方の目論見以上に旅情を煽られた結果、非常に心に残る映画になってしまった。

こういうことがあると旅先で映画を見る意味というものがいや増してくる。

さて、予想以上に寛げるラウンジでビールの次は無料のコーヒーを自分で豆から挽いてドリップする。これまた読書にぴったりの環境ではないか。

 

こうして僕は映画を見に行くのを忘れたのだ。*1

 

 

4.京都の中華

目的は第一に好きな寺の庭を眺めること。

第二に少しだけ残ったフィルムカメラのフィルムを使い切ること。

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光明院

朝8時半に寺に入り、志納の300円を納めたあと縁側で胡坐をかいてぼーっとする。

するとどうだろう、蚊が寄ってくるのだ。

一番端の水路の傍にいたので、次の間の畳の方に避難する。静かな時間が訪れる。

かと思いきやまた蚊が来る。逃げる。座る。蚊が来る。逃げる。座る。刺されている。

蚊遣りでも焚いて欲しいが殺生はいかんのだろうか。

 

そのあといくつか書店を巡るがジャストで趣味に合う店はなかった。家の近所に過去最高に趣味の合う店を見つけてしまっているので、まあそれ以上の店に出会うことはめったなことではないだろう。

 

途中、空也上人立像を見に六波羅蜜寺に立ち寄った。口から仏様のあの空也である。

華奢だ。鎖骨が出ている。そして薄い唇。繊細。

意外とそのほかの像もよい。藤原時代の地蔵菩薩は一般的な地蔵イメージよりも遥かに美しい仏像だった。弘法大師空海)はガタイがよく、湛慶は鉢がでかくて俳優の伊武雅刀に似ている。運慶はあたまが尖ってるのが特徴的で目尻にシワがあり頰が出ている。清盛は荒さよりも達観した雰囲気を醸し出している。などなど、それぞれのキャラ立ちがすごい。

 

さて、京都の中華はいつ出てくるんだという話である。

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平安神宮近くの七福家という中華料理屋の黒酢酢豚。

以前この本を涎を垂らしながら読み、京都と中華が強く結びついてしまっている。なんでも京都の中華は具が細かくにんにくを使わない傾向があるとのこと。日本の中で独自の中華料理圏を形成しているという面白い話だった。

京都の中華 (幻冬舎文庫)

京都の中華 (幻冬舎文庫)

 

七福家はどちらかというと一般的な大衆中華食堂でストイックな京風中華ではないと思うけど、濃厚だけどシンプルな香りで後味がさっぱりしている点は京都人の好みじゃないかな。近くにあったら通いたいですねえ。

 

というわけで、一晩泊まってからの半日旅。

なおこの日の夜は銀座でうまい焼肉を食べるという食い道楽な1日でございました。

 

*1:見たかったのはジム・ジャームッシュの『パターソン』

紙ブックカバー選手権

本を買ったときに紙のブックカバーかける文化って日本だけみたいですね。

もとは大正時代に古書店がはじめたとか。書皮ともいう。

紙のカバー、好きですね。本のサイズにぴったり合うし、よりフィットさせたければハサミを入れてテープで貼ると完璧。一度そこまでやってくれる本屋があってなるほどと感心しました。

で、結構Amazonで本買うことも多いので、店舗で貰ったブックカバーは取っておいてます。そんで近いサイズのカバーを選んでかけてるんですが、ブックカバーって書店によってデザインも質感も違ってて、自分の中で気に入ってるやつとそうでもないやつがあるんですよねー。

というわけで、いま家にある在庫の中でブックカバー選手権を行いたいと思います。出場選手はこちら。

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うん、なんか偏ってますね。パッと思い付くだけで三省堂紀伊国屋丸善啓文堂有隣堂、リブロなんかもない。

 

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①蔦屋書店

TSUTAYAではなく蔦屋書店の方ですね。最近こっちVerの店舗増えましたね。

のっけからなんですが、優勝候補。かなりハリのある紙で手汗にも比較的強い。デザインも良くて使用頻度が高いカバーです。さすが、儲かってはりそうですからね。

欠点としては、手汗でふやけはしないですが白いので黄ばみヨゴレが目立ちます。

デザイン:★★★★★

耐手汗:★★★★

耐汚れ:★★

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ブックファースト

ちょっと野暮ったいですよね。店舗のクリーンなイメージからするともうちょっとデザイン頑張ってもいいのでは。紙質としては薄くてやわいわりには丈夫な印象があります。使い勝手はいい。

デザイン:★

耐手汗:★★★

耐汚れ:★★★

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くまざわ書店

先の2つとは異なりザラザラ系の紙質です。これはですね、ふやけます。ふやけますが、なんかもったいなくない感じがある。昔からのザ・紙ブックカバーという感じで気軽に使えますね。乾燥したパリパリという感触も風情があってよいです。デザインとしては、個人的にはこういう古風なタイプもアリ。

デザイン:★★

耐手汗:★★

耐汚れ:★★

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④ときわ書房

すみません、地元書店です。千葉県の。サラサラとした紙で薄いですがハリはあります。なんとなくシャキっとした感じに折り目も付くのでいい感じです。ただし、朱色の印刷が折れ目のところに来るので、ふやけて毛羽立つと目立ちますね。

デザイン:★★★

耐手汗:★

耐汚れ:★★

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八重洲ブックセンター

個性がすごい。あとよーく見ると背景画像のつなぎ方がダサいんですが、ここまで振り切れてるとありなんじゃないかなって気がしますね。結構つるっとした紙質。触り心地は案外良いです。

デザイン:★★★

耐手汗:★★★

耐汚れ:★★★★

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ジュンク堂

これは正直なところドンケツですね。デザインもパッとしないし、印刷の品質も疑問。紙質も一見丈夫そうなんだけど、なんか汚れを拾ってくるんですよねー。ジュンク堂なんだから、こういうところにも目を配って欲しいですね。

デザイン:★

耐手汗:★★

耐汚れ:★

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MARUZENジュンク堂

さすが丸善さん、ナイスフォローです。文具を扱っていることもあってかこだわりが感じられますね。紙で勝負。控えめだけど気の利いた印刷。手汗に強いというほどではないんですが、必要十分な性能でツルツルすぎずザラザラ過ぎない心地よい手触りを意識していると思います。

デザイン:★★★★

耐手汗:★★★★

耐汚れ:★★★

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東京堂書店

神保町にある書店です。ほかにも数店舗できたようです。なかなかの雰囲気を醸し出しているお店なんですが、ブックカバーも洒落てます。テカり&なめらかな独特の紙質。ですが、濃色のため折れ目やキズなどがだんだんと白く毛羽立ちかなり目立ちます。あまり再利用できないかもしれませんね。

デザイン:★★★★★

耐手汗:★

耐汚れ:★★★

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⑨ブックスルーエ

最後は吉祥寺の書店。キンシオタニさんの個性的な絵が全面に印刷されています。紙質はかなりゴリゴリでザラザラのクラフト紙。毛羽立ちますし印刷も手汗でかすれるのですが、なんというかここまでオリジナリティを押し出していくっていうのがブックカバーの可能性を期待させてくれる一品かなと思います。書下ろしってもっと流行ってもおかしくないですよね。

デザイン:★★★★★

耐手汗:★

耐汚れ:★

 

以上、9つの書店のブックカバーを比較しましたが、栄えある第1位は・・・

MARUZENジュンク堂 にします!

ポイントとしては、「ちょうどいい感じ」ですかね。飾らないけどこだわってる。

候補にはないですけど、丸善のブックカバーも新しいやつ良い感じですよね。でももっと大胆な感じでやっぱり⑦がいいなあ。古い丸善のカバーはいびつな日本地図のやつですけど、あれはかなり汚れるイメージありましたね。時代が感じられるデザインではあったけど、新しい方が好きかな。

候補外でいうとリブロも意外と好きですね。繰り返しパターンが包装紙っぽさがあってなんとなく雰囲気がある。かっこいいので言うとbook expressもいいと思います。

以上、紙ブックカバー選手権、閉会します。お疲れさまでした。

ベネチア

ヴェネツィアヴェネチアベネツィアベネチアヴェニス、ベニス…

ヴェとツィは脳内で発音しにくいのでベネチアにします。

 

空港からは水上バスで移動しました。本島まで1時間くらい。

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船のガソリンスタンド。

初日の夕食はリモンチェッロに伝票を挟んでくる粋な店。

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レモンピールの甘いリキュール。約30度。

飛行機でネックピロー担ぎ続けたのが原因じゃないかと思うんだけど、ハチャメチャに痛かった肩がこれを1杯半グイっとあおって寝たら治りました。ラッキー。

ベネチアはかなり治安がいいと感じました。怪しい人ほとんどいない。

こんな暗い道もへいちゃら。

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ベネチアっぽい写真なんか照れるので焦らします。

翌日は足を延ばしてブラーノ島へ。これまた水上バスで本島から1時間。

レース編み産業の島で、家々がカラフルなことでも有名。

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1軒1軒が絵になるんだこれが。玄関と窓のようわからん布もおしゃれ。

センスがない人はどうやって生きていくんだろう。幼少時から叩き込まれるのだろうか。同調圧力つらくないだろうか(すごすぎて邪推)。

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ブラーノ島では比較的地味な方の風景。

 

お次はムラーノ島へ。

ブラーノ島から30分くらいですかね。本島との中間地点。大きい島です。

ベネチアングラスで有名な島ですが、本島より観光客少なくてのんびりできてよかった。お昼ここで食べてもよかったですね。おいしそうなトラットリアも見かけた。

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かなり暑かったのでジェラートでひとやすみ。レモン。リモーネ。

ガラス買うつもりなかったんだけど、裏通りから攻めたところYalos Murano Glassという気の利いたお店があったのでショットグラスを買いました。

伝統工芸品感のある店か高級なオブジェを売る店が多い中、ここはカジュアルでスタイリッシュな感じでよかったです。でもガラスの透明度は低かったかな。そういう趣向?

 

しかしジャパニメーションはすごいですね。世界の子供たちをグッと掴んでおります。

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PIKACHU

ピカチュウは少女に人気。写真の子の他にもぬいぐるみ抱いてる子を見かけた。

この子の弟はスマホポケモンGOに夢中。この子のお姉ちゃんのスマホ壁紙はアイマス。アニメだけならまだしもアイドル文化まで理解するYOUは間違いなくFUJOSHI

ちなみにこの家族は船で見かけたんだけど、到着間際に現れたお父さんはティアドロップ型サングラスをかけたブルース・ウィリスばりのワイルド親父だったので衝撃でしたね。何人たりとも二次元は止められない。

まあドバイ空港でワンパンマンを見かけた時点でもうジャパニメーションの世界征服は完了したんだなって感じでしたけどね。

 

さて本島。

人生で一番うまいピザでした。耳が・・・はわわわわわわわわわ

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Ai Garzoti って店ですけどもね。駅に近い方なので地元客が多い。目の前の橋にはこの店のワイングラス片手に席が空くのを待つ人たち。

チーズのコクがまた、日本でいうコクとも違ってダシじゃないんだよね。味の要素に分解できないまとまり感、まろやかさ。たまらんね。

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オレンジ色のきれいなカクテルが大流行してます。アペロールというオレンジリキュールを使ったスプリッツ(白ワイン+炭酸)だそうです。カンパリほどじゃないけど、爽やかなハーブ感があってもう夏にぴったりすぎ。ビール、スプリッツ、ワインの選択肢で毎食悩みます。

 

ベネチアが観光地としてものすごく徹底しているのが景観。どこまで行ってもレンガ塀のあの風景なんだね。これはすごく大変なことで、お店の商品の搬入も全部運河から運んできて手で荷下ろしして、橋の階段を乗り越えてこなしてる。

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例えば重機も陸上に設置することはなくて、いわば重機船と呼べる船が活躍する。

 

もひとつおすすめのトラットリアが Cantina Do Spade です。

こちらはリアルト橋からまっすぐ北西、つきあたりを左に曲がって2つ目の角を右に曲がるとあります。店内に飾ってある絵がヘタウマでよい。

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ビビッと来たのはこのボンゴレ。2.0mmくらいありそうなスパゲティーニ。

見るからに家庭的な雰囲気の店で、内装はちょっと吉祥寺っぽい。比べるなって?でも僕の心のふるさとなので。通いたい店ですね。通えないけど。

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イカしたあんちゃん

ところでイタリアといえばファッション。という人もいる。

日本人は基本的に普段着がおしゃれだという話だけど、靴は残念みたいに書かれてたりする。気がする。ということでイタリア人の靴をウォッチしまくってたんだけど、別にそんな大差があるわけじゃないというのが感想。
まあベネチアだから観光客ばっかりで、ヒールなんか歩きづら過ぎるから少ないけど。でも見かけるのは9割くらいスニーカーだし、地元民っぽい人はみんなサンダルだ。

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あーやっと来たベネチア風景。路地だけど。

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エビやイカの料理が多い。イカスミパスタもう1食くらい食べたかったな。

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こういうアメリカでいうデリみたいな店も多い。1日5食食えたらなあ。

 

ベネチアで2番目に有名な橋がアカデミア橋だそうです。

7月のイタリアは日没が20時台で、21時頃までは明るいのです。

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この景色、実は小学生か中学生の頃、通ってたアトリエで描いたことがある・・・

そのままブラブラと南に歩いていくと、素晴らしい景色が待っていました。

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対岸の水際すれすれ一直線に並ぶ建物ひとつひとつに灯る明かり。

Fodamenta Zattere al Ponte Longo という通りです。

どうなんでしょう、有名なのかどうかわかりませんが、何とも言えない郷愁を誘う雰囲気です。有体に言って絶好のイチャコラスポットです。カップルで訪れたらこのあと滅茶苦茶捗ると思います。この辺に泊まったらいいんじゃないだろうか。何を言っているのか。

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もう完全に映画だよ・・・

 

さて、旅の締めくくりはサンマルコ広場の鐘楼から。

ここ最後に行くのオススメします。この街を旅したんだなあと感慨もひとしお。

昼間は並んでるけど、朝はほとんど並びません。

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ドゥカーレ宮殿とかも行ったんだけど、なんちゅーか建物や史跡よりも、ただ街を歩いて景色を眺めて飯を食って酒を飲むのがなにより楽しかった。旅して滞在している感じがとにかく心地いい。

 

最後に大切なことを書き記したいと思います。この旅を通じて本当に心の底から実感したことです。

それは金が欲しいなあ~~~ということです。

そして時間も欲しいなあ~~~とも思いました。おわり。

『メイスン&ディクスン』の膨大な目次

466/542頁くらいまで読んでやっとノリが分かってきた。いやいやくたびれた。最後の守護鴨は笑った。

 

トマス・ピンチョン。アメリカの覆面小説家で、現代最高の作家との呼び声も高い謎の人物。その作品は長大で難解とされることが多く、挫折する人も多い。

野暮な話、「ピンチョン読んでます」と言いたいがためにトライするよね。

実際読んでみて、まあ頭に入ってこないというか、この作品に関しては訳文が時代掛かった古い言い回しが多くて読みづらい。亜米利加とか、費府(フィラデルフィア)とかカタカナ語を漢字で書く。なぜって、原文が18世紀の英語(風)で書かれているから。なぜこの長大な物語をあえて・・・!!

 

全体の構成としては、のちにアメリカの南部と北部を分けることになる線を引くことになるメイスンとディクスンの冒険譚、あるいは珍道中。この軌跡に立ち会ったチェリコーク牧師の回顧録という語りの形をとる。

下巻に突入したところでやっぱり上巻を見直そうと思って、読み返しながらメモを取っていきました。

で、読み返してみると2回目は割と読める。笑いどころも分かってくる。途中で出てくる「亜米利加道中膝栗毛」なるジョーク(原文はどうなってるんだ?)、まさにそのノリ。メイスンの憂鬱症とディクスンの軽さと余計な言動が可笑しくなってくる。小難しい翻訳文かと思ったら、案外悪乗りパートが多いぞと気付く。

 

そのメモをせっかくなのでブログに載せようと思います。あんまりこういう記事を見て参考にしながら読むことはないと思うけど、あれなんだったっけという検索に引っかかって思い出すきっかけになったりしたらいいですね。僕は早くすべての本の中身にCtrl+Fができる時代が来てほしいです。

形式としては、番号が振られている各章にタイトルをつけて、簡単なあらすじまたはキーワードを抜き出します。上下巻で78章。ざっくりした目次のようなものになる・・・つもりだったのですが、1万字オーバーになったので通して読むと20分くらいかかりますね。なんじゃこりゃ。

ちなみに、僕も全然ちゃんと読めてるわけじゃないのでミスリードというか誤読している部分は多々あるかと思います。実は Thomas Pynchon Wiki | Mason & Dixon という超優秀なピンチョンWikiがありまして、メイスン&ディクスンの章ごとの注釈が書かれているのですが、英語が読めない!ので十分役立てられず、大きく見劣りする自前のメモで我慢する次第です。

上下巻本編1,094ページ、少なめに見積もっても50万文字以上。前述のとおり上巻を読み直したり途中しばらく間が空いたりもして、かれこれ10カ月程かけて読み終えました。最後にはしんみりしちゃったなあ。人生初の大河的読書ですね。新聞なんかの連載小説を読むのってこんな感じかしら。

以下、[続きを読む]から膨大な目次スタートです。

 

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ゴミ箱にかける袋を内側に隠すやつを自作する

めっちゃどうでもええねんけど。

ゴミ箱にスーパーの袋かけますよね。それがみっともないだのなんだので内側に隠せるゴミ箱とか最近出てるじゃないですか。上からカバー被せるタイプとか、中に一回り小さいゴミ箱入ってて穴の開いた蓋を置くタイプとか。

一応小型のゴミ箱ではそういうの使ってるんですけど、少し取り回しがしづらいというか、上の方持つとすっぽ抜けるし、袋の設置が若干面倒だし、口が狭くて丸めたティッシュ命中させづらいし、あと一番は値段が高いし。

ということで、フツーのゴミ箱でもなんか自作できそうだなという事でやってみた。

使用したゴミ箱はこれ。上の方に溝があるのでこれが使えそうだなと。

そして購入資材はこれ。東急ハンズで塩ビチューブとワイヤーを購入。

ワイヤーはこれはアルミ線かな、の塩ビ被覆のやつです。まあまあ柔らかいので。

太めのワイヤー意外と切れないペンチ多いからね。柔らかいけど直径2mmあります。

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要は、これでわっかを作ってスーパーの袋かけようという事です。

ゴミ箱はφ225mmなので、これよりやや小さいわっかを作ります。溝の部分がφ210mmくらいとして、円周は約660mm…ワイヤーを結ぶ分が必要なので…とやって適当に700mmくらいにカットしたんだったかな。

チューブは素直に660mm…ではなく、ワイヤー結ぶところは開けておくので640mmくらい。で、チューブにワイヤーを通し結ぶとこうなります。

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わっかの大きさと塩ビチューブの摩擦とゴミ箱の溝でうまいこと止めておこうという仕組みです。チューブもワイヤーもちょっと長かったんですけど、めんどくさいんでわっかを多少歪めつつもそのままGOしちゃうことにしました。

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ゴミ袋をかけた姿です。

思いのほかしっかりと固定されています。

ただ・・・

そんなにゴミ袋隠れてる感ないですね。上にもしゃもしゃ~となってないだけ良いのかもしれませんが、少なくともおしゃれ感は感じませんでした!まじかー

なんかこう、袋自体が紙袋とかね、フランスパンとかオレンジを詰めてて、坂道でオレンジごろごろ落としちゃってイケメンと出会っちゃう用の紙袋とかならこんなわっか付けなくても様になる気がするんですけどね、あいにくオレンジ転がす趣味がないもんで・・・

基本的に液体のついたゴミとかはキッチンの蓋つきゴミ箱に捨ててるんですが、シールとかコロコロのはがしたやつとかやっぱ内袋は必要ですからねえ。見た目は割り切って使うしかないですね。

サインペン

サインペンが楽しいです。イチオシは三菱鉛筆のリブ。

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写真すいません、ぜんぶ適当だけど特にPILOTの“SUPER”めっちゃぎこちなくなっちゃった。

似たようなサインペンだけど、それぞれ特徴があるのです。

ぺんてる サインペン

超王道。1本1本袋に入って売ってます。サインのために使われてるサインペンだ。

ペン先がしっかりしてます。わずかにチューリップ型になってて、文字を書くときにカドを作れるから味のある字になるんじゃないかな。

インクは黒い。書き味はちょっとガサガサしてるけど、書きごたえがあるとも言える。

②PILOT スーパープチ<中>

形はぺんてる、ロゴは三菱鉛筆リブと似ている。いやどっちが先か知らないけど。

インクがややグレーですね。書き味はカサカサくらい。あまり筆圧強くない方がいい。

ほんのわずかにインクが粘るので、「い」とか「ゆ」がいい感じになるかも。

三菱鉛筆 サインペン リブ

毛筆タッチと言いながらほとんど毛筆ぽくない。

一番お上品な形とロゴデザインな気がします。まるっこくてかわいらしい。

なんといってもその書き味がおすすめ。さらさら、すらすら。つっかかりません。

そして、インクがきれいな黒でムラがない。曲線を描くのに良いと思います。

 

僕はイラスト用に買って、なかなか気に入ったのです。他にもハガキや郵便物の宛て名書きにもおすすめ。ボールペンよりしっかりした太さで、油性ペンみたいなにじみやインクだまりもないです。

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これは酉年の年賀状用にリブで描きました。影はサクラクレパスのピグマ01ですけど。

ちなみにスケッチブックはマルマンのクロッキー(クリーム)。簀目があって薄いけどインクのにじみがないいい紙です。あまり分厚い画用紙はなんかとっつきにくいしもし破って捨てる時も抵抗感があるからね。気楽に描けてよいです。ほんとは鉛筆とかコンテに向いてる紙と思うけども。

 

たまには絵を描きたいものですね。やっぱり楽しい。

2016年の読書と『この世界の片隅に』

※引用記事はかなりクリティカルなネタバレあり。この記事も少々ネタバレあります。

 

ほんと本やら映画やらは思わぬところで繋がってくるもんですね。
去年、古事記を読んだこと、参考に読んだ漫画『ぼおるぺん古事記』がこうの史代さんの作品ということ。
その後、こうの史代原作の『この世界の片隅に』のことを映画公開日に知ったこと。

 

 ひとつこの映画の考察記事をご紹介します。

magazine.manba.co.jp

(以下引用)

この光景に重ねられた「この国から正義が飛び去ってゆく」ということばは、あたかも「アキツシマ=トンボの国=日本」から「アキツ=トンボ」が飛び去って行くことと呼応するかのようだ。

 

古事記では日本の雅号(褒め称える異名)として「秋津洲(アキツシマ)」というのが出てくる。
この秋津っていうのはトンボって意味で、日本列島の形を示しているのか、昔の日本はとにかくトンボが沢山いたのか、実際に日本は湿地が多くて豊かな水源があって、トンボは豊穣のしるしとして用いられたのかもしれない。

ちなみに日本の別の異名として「葦原の中つ国」というのもあって、これは神の住む高天原や死者の住む黄泉の国と人の世を区別する表現なんだけど、現世はやたらと葦が生えている土地だと。そういう表現。
葦が群生する湿地帯というのはトンボも多いだろうし、かなりビジュアル的に納得できると思うんですよね。
また、葦が群生というのは人間を示してもいるらしい。神/人間/死者という区別に対応してるんだけど、ちょっとこれはパスカルの「考える葦」を思い出しちゃいますよね。
パスカルは17世紀フランスの人物、古事記は8世紀に日本で編纂されたわけですからロマン溢れますね。両者同じく、葦をひょろっとしてて頼りない弱いもの、それでも群がって強く広く繁栄するものと認識しているはずです。

 

古事記に書かれている神々の勢力争いは実際にあった氏族同士の戦いを表したものとする説もあり、もしそうだとしたら、当時の日本の中枢だった近畿地方がまさにその争いの場であった可能性が高いです。
ちょうど去年は『村上海賊の娘』を読んだのだけど、戦国時代の近畿地方もまた葦原が広がる大湿原だったという描写がある。そういう意味で、『この世界の片隅に』で描かれる干潟や、広島のデルタは西日本地域の土地の歴史を思い起こさせる。

ちなみに聖徳太子の時代を描いた『大和燃ゆ』シリーズも去年読んだのですが、当然西日本が主な舞台で、瀬戸内海を遣隋使、遣唐使の船が幾度も行き来する情景も重なってきました。

 

こうしてエンタメ的な『村上海賊の娘』から『古事記』勉強、そして古代史勉強を経て改めて歴史ロマン『大和燃ゆ』を楽しみ『この世界の片隅に』の昭和へとジャンプしたところで2016年の個人的西日本ブームが収束したわけです。

 

もともと歴史では人類史や縄文時代みたいなうんと古い時代が好きだったんですが、古事記や大和燃ゆに触れて弥生時代古墳時代以降の豊かさにもやっと気づくことが出来ました。
これが思わぬつながりで昭和にタイムスリップしたいま、わたくし個人的な3大興味ない時代(古墳・戦国・昭和)のひとつであった昭和についても興味が出てきてしまった次第であります。
そして、私の手元には友人から貰った「昭和史」の本が。

2017年に続く・・・


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なんとかまとめに漕ぎつけたところ大変不格好なのですが、
冒頭でご紹介した記事でもうひとつ、ビビっと来た点が。

孤児の母親の耳からドサリとわき出すウジ虫に、虫の営みを感じるのは高等テクニックすぎません??
最初は急いで飛ばしてしまったことなど非常に正直に書かれているのを読んで、自分を振り返って、作品を鑑賞するとき色々と逃げていること、無意識に見なかったことにしようとしていることがたくさんあるんだなと気付きました。が、ウジはさすがに逃げたくなるじゃん・・・

連れ帰ってきた子からわくシラミと痒みを感じる北条家の人々というのは目から鱗でした。というか自分がずっと欲していた「痒みの表現」を見落としてたというのが、悔しいな~。絶対にウジの件でビビってましたね自分。あの子に対して。
映画とか小説とかで、例えばブーツに水が入って足が痒いとか、肌に触れる木綿がチクチクするとか、そういう事を表現するのはものすごく難しいしほとんど見たことがないなあと思っていたんだけど、それがあった。
特に、シラミの飛び方がほんとに緻密に描かれていて、あのハネ方とあの音の痒そうさといったらない。
この映画は「日々の生活をリアルに感じさせる」という感想が多いけど、そのリアルを浮かび上がらせる芸の細かさときたら呆れるほどの丁寧さですよね。

恐ろしい描写の背景にこそ、強い思いや意思が描かれていると考えるべきですね。
それを無理やり直視することだけが正しいわけじゃないですけど、余裕があるのならそういう事まで汲み取れるような見方を身に付けたいなと、単純に憧れました。