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映画レビュー:この世界の片隅に

ブログ

konosekai.jp

言葉にならない

なのにブログに書くんかいなっちゅーね。

Twitterで感想が書けないことで話題のアニメ映画、『この世界の片隅に』です。

舞台は第二次世界大戦さなかの広島県呉市・・・「あっ、戦争モノかぁ・・・」と思った方待ってください、頼むから待ってください。ちがうんです。お願いですから・・・

火垂るの墓で一生の心の傷を負った御仁は多いことと思います(貶してません、影響力の大きさです)。また子供の頃からの教育と、いかにも感動をテーマにした反戦映画の数々に我々日本人は万年食傷気味であることは僕も身をもって実感しております。

それらの多くが戦争の悲惨さをクローズアップし、切り取り、目を背けたくなる事実を強引にでも記憶させる意図を持ったものであったし、テレビドラマや大衆映画としてはある程度商業的な判断が必要でもありました。

しかし、本作はちがう。前述のとおり、散々戦争の悲惨な場面を切り取った映像を見続けてきたはずなのに、ふわっとした絵柄で日常の愛しさに溢れるこの映画を見てやっと、当時生きた個人個人にとって、戦争、空襲、そして戦時下の生活がどういうものだったかを初めて実感することができたんです。悲劇だけを切り取った映画ではなく、大部分が暖かい生活の描写であったからこそ、私たちの生活と繋げて受け止めることができたんです。

なので、全くもって泣かせに来たりしません!結果的に泣くだけです!断じて「泣ける」映画じゃないです!そういうのやめてください!

 

公開5日目現在、ネット上は絶賛の嵐で人によってはTLがすごいことになってしまい、同調圧力めいたものを感じて引いてしまってる人がいるように見受けられます。

わかる。あんまりみんながすごいすごい言ってると斜に構える。

ただ、最近ときどき起こるこういう事態って、SNSが出来て初めて可視化された現象ですよね。その性質も相まって集団のベクトルが増幅されてしまう事もあり、あまり見慣れないコミュニティの大きなうねりに不安を覚えるのかもしれません。

それでも、そういう状況を超えてなんとか劇場にたどり着いてほしい。

 

◆なぜ言葉にならないのか

映画を見ていただければ実感としてわかるんですが、映画宣伝の常套句みたいなものが何一つしっくりこないんですよ。「泣ける」違います。「よかった」浅い。「面白かった」エンタメではない。「クスリとした」したけど全体を表してない。「ためになった」なるけど記録映画じゃない。「考えさせられた」考えるというより感じる。

最後の「感じる」が近いと思うんですが、見終わった後は不思議な感情そのもの、感情の生データしかないわけです。だからみんなこぞって「見てください」と言うんです。映画好きはみな、それなりの格好いい言葉でオススメしようと思ってたのに、何も言えなくてもどかしさに泡吹きながら「みて・・・」とだけ呟きます。

 

◆緻密さ

映画で描かれる広島市や呉の町並みは、入念に実在の建物と人々を調査して描かれたものという事です。そして呉に配置された戦艦や空襲の日の天気まで、徹底的に反映させる。これが圧倒的リアリティを生む。絵はアニメテイストなのに、実写映画をはるかに上回る実在感がある。

空襲の戦闘機の音、砲弾の破片が瓦や生活用品を鋭く破壊する描写、防空壕で聞く爆撃音、これらの恐怖感はちょっと他の創作物で体験したことがない。

映画館の音響に左右される部分もあるせよ、防空壕のシーンは本当に映画館のすぐそばに着弾したような振動が全身に響くし、砲弾の破片の鋭さは鋭利な刃物を目の前にしたかのように明らかな殺傷能力を感じて身がすくむ。

また、スズメや野鳥のさえずりが聞こえる長閑な日を突然空襲が襲ったりして、映画としては不穏な空気を全く演出していないのに、当たり前の日常に突如戦争が割り込んでくるその現実が一番怖いということがわかる。

これに関しては映画館で体験することにかなり意味がある部分だと思う。

 

◆エロい

すずさんは全然そういうタイプじゃないんですよ。

天然ボケで子供が抜けきってない感じで、キャラクターとしても素朴。

なのに水原のあのシーンはなんだ。

めちゃくちゃ触れたくなる横顔。水原…よく我慢したな、膝枕はして貰ってたけど…

そして夫の周作との微笑ましいシーンも。奥さん色っぽい。なにこれ。

 

◆主演:のんについて

陰謀論はいただけないですね。すぐ物事を何かの怒りに持っていってしまう人が稀にいますが、哀しいです。いったいこの映画のなにを見ていましたかと。

個人的には、しばらく前に映画雑誌のCUTでインタビュー(海月姫だったかな)受けてた時、作品とキャラクターの背景についての考察がびっくりするぐらい鋭かったので、たいしたもんだなあと思った記憶があります。今回もパンフレットで監督がその点を指摘してるし、本人のインタビューでもキレキレです。

しかし圧倒的にコミュ障だとおもうので、芸能界というか社会的に暮らしづらいだろうし、ときたま人を怒らせるだろうなという想像ができるので、なんというか気の毒だけど。

と、そんな性格も相まって、少し抜けてるとことかすずさん役にぴったり。技術的に上手というよりは、憑依とか同化って感じ。もうすずさんはこの声じゃないとダメ。

 

「生きるっていうことだけで涙がぼろぼろあふれてくる」

彼女が試写会で発した言葉だそうですが、ただ一人この作品を一言で表すことができたというのが凄い。

 

以上、なんだかやっぱり上手くまとめられなかったけど、とにかくこの感情をアウトプットしたかったので3日間悶々とぐるぐるぐるぐる考えたことを吐き出しました。結果的にネット上の意見をなぞってるだけっぽいけど。

とにかく伝えたいのはただ一つ、この映画を、観てください!おねがい