ビルバオ-ニューヨーク-ビルバオ

心地の良い小説だった。妙なてらいがなく、誠実。身の回りの物事、人々が語った物事が積み重なって自然とバスクの世界を表していく。
過去を振り返っていく物語でありながら、ありがちな現代への恐れみたいなものがなく、その先に未来への出発がある安心感。

それから、訳者さんが若いですね。僕と5つ違いでバスク語の小説を訳す・・・すごい・・・!

 近頃、白水社の「エクス・リブリス」シリーズがいいなあと思っていて、ニッチな外国文学の翻訳シリーズなんだけど、なかなか独特な本が多い。今回の小説は、スペイン・フランスにまたがるバスク地域で育った著者のルーツを探りつつ、これからのバスク文学について視線を向けていく話。

あまり具体的なイメージがないバスク地方だけど、耳にしたことのある地名も多い。例えば、スペイン内戦時代にドイツ軍の爆撃を受け、ピカソの絵で有名なゲルニカビルバオにほど近い、バスク地方の代表的な都市。

小説では、バスク語の特異性がテーマのひとつになっている。原著がバスク語で書かれていて、歴史の少ないバスク文学に光を当てる小説として話題になったらしい。

バスク語の特異性というのはバスク民族の歴史に関わっていて、この地域は旧石器時代から人間が生活していて、今のヨーロッパ人の主流である印欧語族以前の言語が反映されているとか。ただし、ヨーロッパで言うとバルト三国もそうだと思うけど、民族としての覚醒は近代に入ってからであって、中世までにはかなり混血も進んで文化も混交しているでしょう。特異性と言っても完全な独自の文化というよりは、古代のエッセンス、周辺国に翻弄された歴史、ビスケー湾を中心に築いた伝統的な漁業、っていう「現在のバスク」を意識した方が良いのかなと思います。

 

で、バスク語が特徴的だという話の流れで、この小説に出てくる登場人物の名前が非常に馴染みのない響きで覚えづらい。ちょいちょいメモをしながら読み進めたので、もう一度おさらいして書き足した登場人物一覧を作ってみました。

これを役に立てる人なんてまずいないと思うんだけど、なんでこんな情報が?というのがネット上に転がっているというのは面白いので転がしておきます。

全登場人物というわけではないけど、細かいとこも載ってたりします。基本的には登場順でリストアップです。

 

登場人物

  • アウレリオ・アルテタ・・・重要な画家。
  • リカルド・バスティダ・・・建築家。
  • ホセ・フリアン・バケダノ・・・美術館責任者。
  • カルメン・バスティダ・・・建築家の娘。
  • オチャガビア・・・実業家。
  • ダリオ・デ・レゴヨス・・・印象派の画家。
  • スビアウレ兄弟・・・アルテタが師事。古い橋を描いた画家のひとり。
  • ベニグナ・ブルゴア・・・アルテタのモデルになる。
  • フェリックス・ベリスタイン・・・スビアウレ兄弟の知人。
  • リカルド・バスティダ・・・建築家バスティダの息子。父親と同名。
  • ファン・ルイス・・・リカルドの弟。
  • ミゲル・デ・ウナムノ・・・国外追放された文学者。
  • エネコ・バルティア・・・『ビスカイアの漁師の語彙辞典』の著者。
  • マヌエル・アイエルディ・・・60年代初頭のオンダロアの漁業専門学校の教師。
  • ヨン・アカレギ・・・父の旧友。
  • レナータ・トマス・・・60代のアフリカ系アメリカ人。飛行機で隣になった。
  • インダレシオ・プリエト・・・社会党の政治家。
  • バスティアン・バケリサ・・・プリエト亡命を助けた漁師。
  • マンシシドル・・・潜水士。
  • ミエル・ガリャステギ・・・トキ・アルギア号の機関士。
  • アンティグア・ピペラ・・・ミエルの妻。
  • ドリス・カヴェヴァ・・・エストニアの詩人。
  • メレディッド・パウ・デイディーズ・・・ウェールズ語の詩人。
  • アラン・ジェイミーソン・・・スコットランド人。
  • フレッド・・・博物学者。
  • ムヒカ・・・奴隷船ドス・アミーゴス号の船長。
  • サンティ・メアベ・・・鳥の調教師。社会党党首トマス・メアベの兄弟。
  • フェルナンド・イラマテギ・・・アンティグアの船を修復。
  • ホセ・マリア・オリオル・イ・ウルキホ・・・イラマテギの船を評価。
  • アマリア・バレド・・・アルテタの再婚相手。
  • イシドル・エチェバリア・・・弁護士。
  • フィオナ・マクレー・・・編集者。
  • ケヴィン・マクニール・・・ストーノウェイの作家。
  • ホセ・フェルナンデス・・・医者。
  • スコット・ハイタワー・・・ニューヨーク大学の英文学教授。
  • マーク・ラッドマン・・・大学教授。
  • マリー・ポンソ・・・詩人。
  • ヴォイチェフ・ヤスニー・・・チェコ人映画監督。
  • カルメンチュ・パスクアル・・・ニューヨークの翻訳家。
  • レスレクシオン・マリア・デ・アスクエ・・・言語学者。
  • チョミン・アギーレ・・・小説家。

著者キルメン・ウリベの家族、親戚

  • リボリオ・ウリベ・・・祖父。
  • マリア・ガビナ・バディオラ・・・曾祖母。
  • マリチュ・・・父の叔母(祖母アナの一番下の妹)
  • ムトリクの兄弟・・・兄は失明。弟はアルゼンチンへ戻る。
  • ホセファ・ラモナ・エペルデ・・・ムトリク兄弟の妹。
  • イシドロ・オドリオソラ・・・エペルデの夫。
  • ホセ・フランシスコ・オドリオソラ(トゥバル)・・・イシドロの息子。アナとマリチュの父親。
  • ボニ・ラカ・イトゥリサ・・・叔父。
  • アンパロ・・・母方の祖母。
  • ネレア・アリエタ・・・妻。
  • マルガリータ・・・叔母。
  • ホセ・ウリベ・・・父。
  • アネ・・・母の姉。ボニ叔父さんの妻。
  • イニャキ・・・従兄弟。
  • イポリト・ウルビエタ・・・母方の祖父。
  • ホシュパントニ・オサ・・・リボリオの母。
  • サンティ・・・父方の叔父。サグスタン号の船長。
  • チョミン・・・父方の叔父。ビリャ・デ・オンダロア号の船長。