グールド魚類画帖

第一に汚辱の物語。それから伝奇小説で、メタフィクション。
そのメタ構造が作用したのか何なのか、悪夢のような話を読んでいるとすぐに眠くなり、眠っては小説の夢を見るという体験をした。何度読んでいる間に居眠りをしたかわからない。
単純に原文あるいは訳文の語り方が非常に煩わしいために眠くなっている気もするけれど、その眠気と覚醒が潮が満ちては引く独房のイメージと重なり、不思議な浮遊感があった。

各章のはじめに差し込まれる、この物語の着想となったグールドの魚の絵は確かに奇妙な魅力があり、どれも美しい。特にシルバー・ドーリーの絵からは、作者の言う「人間のような表情」を強く感じた。

かなり読み辛い部類の本だと思うのだけれど、作品としてなかなかに強度があって独特の世界がある。最後の展開と文章は見事。

 

非常に不思議な物語だったので、ブログでも紹介。

この本は奇書ですね。調べてみると、マジックリアリズムという手法であるらしい。
幻想的だけど、ファンタジーではないよな、ディティールはかなりリアリズムに近いし…
と思ってたところで、なるほどなーと思った。魔術的な印象がラテンアメリカ文学に通じる。